cource map1. 南暑寒荘から
雨竜沼湿原へ


1992-7-24 (金) はれのちくもり [27度]



おとといの晩 (7/22) 急行・八甲田に乗り、青森から適当に JR を乗り継ぎ、 約 20 時間かかって北海道内の滝川 (たきがわ) 駅 に着く。昨夜は駅前のバス停のベンチで輪行袋にくるまって寝る。 以前シュラフでは暑くて寝苦し かった経験から、'86 年の北海道旅行ではテントの中で輪行袋にくるまって 通していたが、今朝はずいぶんと寒くなっている。 明け方ころに何度かベンチの上で目を覚ましてしまう。あまりに寒いせいか、 駅前で寝ている旅行者は私以外には誰一人としていない。

さて、今日は滝川から南暑寒荘へと北海道旅行の初日ラン (走行) だ。 走り始めるとすぐに畑や田んぼの風景が広がる。麦畑の麦はまだ穂が 黄色くなったところ。稲はまだ青く、穂が垂直に立っている。 少し寒いが、いよいよ夏だなという感じのさわやかな緑の風景が ひろがっている。

なんとなく走り始めてからコメを買い忘れたのに気付き、滝川から少し 国道を走ったところにある江部乙 (えべおつ) でまず食料を 調達する。この町には米屋が見当たらない。国道を少し離れるとわかるの だが、このあたり一帯は水田が多く、米を作っている農家が多いのだ。

とりあえず近くの酒屋に入って1 kg コメを分けてほしいとお願いすると、 お店の若奥さんは少し悩んでからそのお宅の食事用のコメを分けてくた。 1.2 kg 400 円。若奥さんいわく、このコメは去年のコメを籾のままとって おいたもので、ちょうど昨日、精米したやつだそうだ。だからうまさは 太鼓判だとか。わくわく。1.2 kg のコメ袋がフロントバッグでズシッときて、 なんとなく長旅の重みを感じてしまう。

江部乙周辺の水田地帯をぬけてオシラリカ・ダムに向かう。このダムは 長くてゆるい上りの舗装が終わるころに右手にあらわれる。 ダム横の公園にはおいしい水が出る水道とトイレがあり、ここで キャンプを張ることもできる。今日は 1 家族がテントを張って近くを 散歩している。

ダムから先はダートになる。砂利は深くなく、よくしまっている。ダムの 集水地域を説明する地図によれば、ここから南暑寒荘までは 11 km ある。 ほとんどは "坂をのぼる" 程度の傾斜だが、ところどころ10 % 近い短い 急坂が出てくる。この急坂は林道を作るときに尾根をむりやり巻いて道を 通したような感じになっている。そのかわり、この林道には切り通しが 全く作られていないのでダケカンバの森と雑木林のみずみずしい美しさが 身近に堪能できる。路面は 10 cm 程度の高さの小さな波をうつところが わずかにあるくらいで、平らなドロの路面を選んでいけば快調に登る ことができる。

とんぼが乱れ飛ぶ橋の上でお昼にする。ここからはヒーコラいうことも できないような強力な坂が登場する。名付けて "1 段登り返し坂"、 "3 段キリキリ舞い坂" など。最後の南暑寒荘駐車場入り口はげろげろ。 途中でチェーンをフリーの内側に食い込ませてしまった。このとき、 チェーンをフリーとスポークの間からむりやり引き抜いたのでスポークの 根元に傷をたくさんつけてしまった。あとでトラブルの元にならなければ よいが ... 心配。

minami-shokan-so雨竜沼湿原の 入り口にある南暑寒荘(みなみしょかんそう) は札幌からも車で簡単にくることができるため、 週末は混雑するようだ。駐車場には50 〜 60 台とまれるが、土曜には 駐車場から車があふれて林道のほうまで駐車車両がのびるそうだ。

建物は 去年 (1991 年) 建て替えたばかりのピカピカの山小屋だ。 小さな食堂もあり、ジンギスカンの材料セット (燃料の炭つき) も売っている。 宿泊料金はテントなら 200円、きれいな 2 階建ての山小屋でも素泊り 1泊 500 円という安さだ。

campsite overview
南暑寒荘キャンプ場。しっかりした炊事場がある。

さて、今日はまず今回の旅のために新調した MSR の灯油コンロで メシ炊きをする練習をしなければならない。このコンロは軽量、コンパクト なのはよいが、火力の調節が難しく、特に弱火が使いにくいと聞いてきた。 点火試験はしてきたので、あとは実戦なのだ。

MSR Burner
折りたたみ式のコンロ MSR WhisperLite (International)。
燃料ボトルは別。灯油で使用。

いろいろ心配はしたけれど、こまめに燃料コックを調節するとなんとか おいしいご飯が炊けてしまった。ただし、弱火中に風があたると火が 消えてしまうので付属品の風防が必須だ。それにしてもススが多い。 灯油のせいか、点火するときにコンロの裏側にびっしりとススがついて、 料理をしている間に乾いたススがとびあがり、そのへんにかまわず着地する。 着地したススを不用意に拭き取ろうとすると、こんどはススが着地した テーブルの上や地図の上にべっとりとこびりついたりして始末におえない。

メシ炊きの練習がすんで、車にマウンテンバイクを積んできたファミリーに 声をかけると、おとうさんとなんとなく話が合ってしまう。その家族の 子供と遊んだり夕食をごちそうになったり、今日登ってきたという 雨竜沼湿原でのホームビデオ (!) までみせてもらったりする。 山の話、ツーリング (おとうさんは元ライダー) の話、北海道の話などで 盛り上がり、これからの旅を楽しみにテント泊の初日が過ぎていく。


1992-7-25 (土) くもりときどきあめ


テン場 (テントを立てた場所) の南暑寒荘から雨竜沼湿原 (うりゅうぬましつげん)までは湿原から流れ出す静かな沢に沿って登る。 途中、人が渡るだけの小さくて細い吊橋をユラユラと渡り、さらに進んで 沢の底が何か黒いもの (流れ出した泥炭?) でおおわれるようになると 湿原はあとすこしだ。

flowers mokudou湿原内は木道がよく整備されている。泥炭の成長にムラがあるため、 湿原には高低差 3,4 m の緩やかな丘がつらなっている。アヤメとキスゲ (エゾカンゾウ?) が群落を作ってにぎやかに花を咲かせているが、 木道の脇をよく見ると小さな花も咲いている。あたりを見回すと丘の高いところや 低いところなどに上下位置の関係なしに小さな池がたくさん点在している。

そういう池の中に不思議な水草がただよっていたり、水面が雲を映したり するのを眺めながら湿原を縦断して歩いていくと、1 時間ほどで湿原を見渡せる 展望台に着く。展望台から湿原をながめると、高地らしいひよわな緑が 湿り気のせいでぼんやりと見え、なんとなく小さな夏を迎えているという 感じがする。

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雨竜沼湿原によくある三日月形の池塘 (ちとう)

overview土曜 だが人はあまりいない。道内では有名な湿原だそうだが、展望台に 着くまで 4 人会っただけだ。展望台から見渡すと、人気のない湿原は 低い山に囲まれた大きなお盆のようになっているのがわかる。雪解けの ころには湿原全体が大きな池になり、それで雨竜沼とよばれるのだそうだ。 ここから日本海がみえるという南暑寒別岳に登ってみたが、あいにく 霧で展望はなかった。途中でネマガリタケのタケノコをとって緩い 笹ヤブの斜面をおりて帰る。

テン場では雨が降ってきたので南暑寒荘の広間に入って記録を書いて いるうちに、ライダー(オートバイでツーリングしている 人のこと)や地元のおじさん、おばさんたちがやってきて、 そのまま宴会になる。札幌からの女性ライダー2人は、「道内では いつも 80 km 以上で走っているので四国のツーリングはスピードが 遅くてつらかった」とか、「北海道は結婚も離婚も手間がかからないから ヨメは北海道がいい」、「最近は自動販売機のショップで寝泊まりする 旅行者がいなくなった」、「札幌でも駅寝する人は少なくなった」などの 話を聞く。地元のおじさんからは「エキノコックス対策をしている 上水道は少ないから、どこの水を飲んでも同じ」、「クマが襲ってきたら 胸元にとびこんで首をしめろ」などとコワイ話もでてくる。

こうして話しているうちに、今日の南暑寒別岳山頂では雲が一瞬 切れて展望があったと聞いてくやしくなり、明日もういちど登って みることにする。


1992-7-26 (日) くもり、濃いキリ

2度目の南暑寒別岳はさらに濃いキリで何も見えず、早々に下山する。 霧の湿原ではテント泊をしながら絵を描いている母娘がいた。水彩絵の 具だが霧が濃くて紙が湿っているため、絵の具をとく水がいらないと いう。明日はトムラウシに行くとか。「晴れるといいですねぇ。」などと かわしつつ、今日は団体さんなどがぞろぞろ、人が多い。

15:00 ごろに下山して、江部乙まで自転車で下り、テント泊する。


1992-7-27 (月) あめ

朝から雨なので江部乙にある、芝生が美しい公園でテント泊したまま停滞する。

ahiruきれいな 池に白いハスの花が咲いている。大木の下にテントを張り、 深い芝生の居心地がよい。白いきれいなアヒルがガァガァとおしりを 振ってテントの横を 2 匹歩いていく。お茶をわかして1日じゅう文庫本を読む。 江部乙温泉の電気風呂でビリビリしびれる。

近くの八百屋でトウモロコシを買ったら、それをゆでてテントまで 持ってきてくれた。2 本買ったはずが 3 本になっていた。なんという おおらかな土地か。とにかくごちそうさま、ありがとう。

この公園は昨日の夕方にキャンプ場を探しているときに、近くにあるこの八百屋で 「暗くなってきたし、何キロも離れた遠くのキャンプ場よりはここにしなさいな」 と、勧められたのだ。ここのおかみさんはキャンプが好きなようで、先週も稚内 (わっかない)の ほうに行ってきたとか。北海道のキャンプに好きなときに行けてうらやましい。

今テントの中で読んでいるヘディンの「さまよえる湖 (上)」は、 中国西部にあるロプノール湖にむかって砂漠の中を流れる川をいかだで 下る川旅の探検記だ。タクラマカン砂漠の西側から川下りを始めるらしい。 中学のときに「ヘディンが移動する湖を発見した」ようなことを習った覚えが あるのだが、まさか砂漠の中を川下りして自分の仮説を実証したとは思いも よらなかった。もう一冊、本多勝一の「北海道探検記」は 2 度目。初めて 読んだときと共感できるところが違うのが興味深い。



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